「靴は脱ぐとほっとする、下駄(げた)は履くとほっとする」。日田市丸山、月隈木履の伊藤高広さん(56)は下駄の製造を手がける職人だ。師匠である祖父から聞いた言葉は、いつもそばにある。
日田市は静岡、広島と並んで、大正時代から「下駄の三大産地」と称された。日田下駄は地元の産材を用い、市内の職人の手によって作られる。特長は加工後も足の裏で立体的に感じる木目の力強さ。江戸時代から180年余り、全国で親しまれてきた。昔ながらの風情ある下駄に加え、底にゴム材を敷いた消音商品や、デザインを重視した商品など、時代に即しながら市内の七つの工房が製造を続けている。
19歳で祖父に師事し製作を始めたという伊藤さん。「子どもの頃から下駄や道具に触れて、楽しそうだなと思って職人を目指しました」と振り返る。主に手がけるのはさまざまな足の形に合わせた一点物。「下駄は昔ながらの日本人の心を感じられる履物。気持ちよく履いてもらって、日田下駄を長く愛してもらいたい」と話した。