【別府】別府市鉄輪地区で住民や観光・経済関係者でつくるグループ「鉄輪温泉みらい会議」(安波照夫委員長)が湯治文化と湯煙の景観を後世につなごうと活動に熱を入れている。オリジナルのまちづくり計画を作り、朝市を開くなど地元主体の活性化策を模索。2026年は鉄輪温泉の開湯750年の節目に当たることもあり、やる気を高めている。
グループは住民のほかホテルや飲食店などを経営する計26人の委員らで構成。同グループによると、1950年代には66軒あった旅館や78店もの商店が後継者不足などにより半減したという。地域の衰退に危機感を抱いて24年12月に組織化した。
活動の方向性を明確にするため、25年3月に「鉄輪温泉みらい基本計画」を策定。「温泉と湯けむりの風景を大切に守り、心とからだを元気にするまち」を基本コンセプトに▽長期滞在プログラムの開発▽ビジターセンターの新設▽事業継承対策▽交通体系の整備―など13のプロジェクト推進をうたっている。
そのうち「商店街の魅力づくりプロジェクト」は6月に朝市を試験的に開催した。地区内で青果店を営む稲垣健児さん(42)が中心となり、県産の野菜や果物を仮設テントで販売して好評だった。「かつては湯治客が朝市で食材を購入し、地獄蒸しで調理して食べるのが当たり前だったと聞いた。以前のような情景をつくりたい」と稲垣さん。
鉄輪温泉は鎌倉期の1276年に一遍上人が諸国遊行の途中に立ち寄り湯治場を開いたことに始まる―と伝えられる。同グループは来年、週末恒例のライトアップイベントや「鉄輪湯あみ祭」(9月)を例年以上に盛り上げる構想を抱く。
安波委員長(77)は「地域が一体となり、同じ方向に動くことがまちづくりにつながる。子どもたち世代に鉄輪のすばらしい景観を残せる活動をしたい」と話している。