大分市佐賀関の早吸日女神社の氏子らでつくる青年会は、毎年元日に縁起物として手作りの「タコの置物」を神社で販売している。新年の売り上げは、地元で起きた大規模火災の義援金に充てることを決め、製作を急いでいる。会長の近藤弘之さん(49)は「被災者の状況を目の当たりにして決断した。少しでも助けになれば」と話している。
青年会は2019年、佐賀関地区にある神社の祭事の手伝いや、伝統・文化の継承などを目的に発足した。メンバーは約20人で、主に早吸日女神社で活動している。
タコの縁起物は、「コロナ禍でも参拝客を楽しませる方法はないか」と23年に青年会が考案した。佐賀関沖合の豊後水道に神武東征にまつわるタコの言い伝えがあり、早吸日女神社はタコを食べずに願い事をする「タコ断ち祈願」で知られることから販売を始めた。
縁起物はモルタル製で「たこびな」と呼ばれる。高さ約6センチでテニスボールよりやや小さいサイズ。色やデザインを季節や祭事に応じて変更しており、シリーズとして集める楽しさも演出している。
製作を担うのは青年会のメンバーで、デザイナー兼イラストレーターとして活動する橋本康聖さん(50)。「一つ一つ型を取り、筆で色を塗る。手作業なので1日に製作できるのは数個ほど」と手が込んでいる。
橋本さんは6年ほど前に福岡県から実家のある田中地区にUターンした。特技を生かして地元を盛り上げようと、神社に設置するタコのオブジェやオリジナルステッカーも手がけてきた。
今回の大火で田中地区は甚大な被害を受けた。橋本さんの自宅は無事だったものの、鎮火までに時間がかかり一時は避難生活を余儀なくされた。被災した影響で置物の製作は大幅に遅れ、現在は例年の100個を用意できるか分からない状況という。
橋本さんは「田中地区にまたみんなが戻って暮らせるよう願っている。生まれ故郷の復興に少しでも貢献できるよう、正月までにできるだけ多くの数を用意したい」と話し、作業を進めている。