【日田】日田市源栄(もとえ)町の「小鹿田焼の里」の陶工坂本拓磨さん(31)が、公益財団法人・日本民芸館(東京)の本年度新作工芸公募展で、最高賞に当たる「日本民芸館賞」を受賞した。父の浩二さん(56)も過去に2度、同賞を受賞しており、親子2代での快挙となった。
同展は、暮らしに根差した民衆工芸の美をたたえる目的で開かれている。本年度は陶磁器、織物、染め物など計6部門に全国から1595点(うち陶磁器450点)の応募があった。
坂本さんの作品は「飴釉(あめゆう)打掛二斗五升壺(つぼ)」(高さ53センチ、幅42センチ)。小鹿田焼の中では大作に当たる。登り窯から出した際に「予定より黒っぽかったが、かえって色味がいい」と、出荷せず取り置いていたという。審査員からは「『肩』と呼ばれる壺上部の曲線が美しく、白い色も良い」などと評された。
作陶では想定通りに仕上がらず、歩留まりが悪い時もあるが、昔ながらの工法で自然と向き合ってきた。「作陶は長い工程の一部分。土を守り、まきを用意してもらうなど多くの人の尽力で守られてきた。受賞は先人の努力のおかげ」と感謝する。
現在の小鹿田焼の定番は「刷毛(はけ)目」や「飛びかんな」といった文様。300年以上の歴史を誇る同里で、100年ほど前から用いられるようになった。「素朴な技法を守りつつ、時代の流れを受け入れてきたのが小鹿田焼。次の定番を生み出せるよう努力を重ねたい」と力を込める。
浩二さんは「多くの人から注目されるようになるのでプレッシャーはあるだろうが、変わらず丁寧な仕事を一緒にしていきたい」と話している。