【戦後80年20紙企画 あの時私は】掲載を終えて 時の壁を痛感、浮き彫りになる「戦争の事実」

 全国各地の戦争体験者の声をつないで、80年前に何があったのかを伝えられないか―。賛同する地方紙20社で証言を集め、記事を共有し、各紙に掲載した。貴重な体験談を広く届けられたと考えている。
 地上戦、強制疎開、集団自決、空襲、原爆投下…。どの記事でも浮き彫りになるのは、戦争が人々の命や暮らしをいとも簡単に奪っていく事実だ。「戦争は人間が人間ではなくなり、道具として使われてしまう」。佐賀県鳥栖市の牛島啓爾(けいじ)さん(88)の言葉は、戦争というものの本質を突いていると感じた。
 80年という「時の壁」も痛感した。既に従軍経験者の証言を得ることは難しく、内容は市民の被害がほとんどを占めた。当時を知る人がますます少なくなる中、こうした企画自体も今後できなくなるだろう。
 今回、本紙は20代の若手記者が取材を担当した。体験者に直接話を聞き、関連する事実を調べ、記者自身が深く知る機会にもなった。戦争の記憶をどう継承していくか。報道機関として、この大きな課題を乗り越えていきたい。(大分合同新聞社報道部編集委員・小林大輔)

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