「消滅世界」正常と感情に翻弄される

「消滅世界」の一場面(ⓒ2025「消滅世界」製作委員会)

 性愛が否定された時代を舞台に、世間の「正常」と自分の感情の間で翻弄(ほんろう)されていく女性を描いたドラマ。
 夫婦間の性がタブー視され、人工授精での出産が常識となっている日本が舞台。主人公の雨音(あまね)(蒔田彩珠(まきた・あじゅ))は両親が愛し合って生まれたため、幼少期から「近親相姦(そうかん)」「気持ち悪い」といじめられてきた。
 夫から関係を迫られたことがきっかけで離婚。その後、親友樹里(恒松祐里)の勧めでマッチングアプリを始め、朔(柳俊太郎)という男性と知り合い、再婚する。深雪(松浦りょう)という恋人を持ち、家庭に性を持ち込まない朔に安心感を覚える。
 その後、雨音と朔は「エデン」という実験都市に居を構えることになる。ここでは出産が管理され、男性の妊娠も研究している。生まれた子どもは親元では育てず、コミュニティー全体の子どもとして平等に愛している。一見博愛主義のように思える場所なのだが…。
 原作は村田沙耶香の同名小説。物語の舞台は性愛や恋のしがらみ、家族関係といった生々しさを忌避し、排除した「清潔」な社会。愛情を向ける対象が定まらないという側面もある。
 現実社会とは倫理観が大きく異なっており、初見の時は戸惑う人も多いと思う。彼らの考える「正常」を異常だと感じるとき、私たちの正常は正しいのだろうかとふと頭をよぎる。背中からじわじわと怖さが押し寄せてくる一本だ。

 シネマ5bisで13日(土)~19日(金)の正午、午後5時15分。(この日程以外も上映あり)

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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