「はだしのゲンはまだ怒っている」物語のテーマをいま一度問う

「はだしのゲンはまだ怒っている」の一場面(ⓒBS12トゥエルビ)

 中沢啓治さん(1939~2012年)の漫画「はだしのゲン」をテーマにしたドキュメンタリー。
 週刊少年ジャンプで1973年に連載開始。原爆投下で家族を失った主人公ゲンが貧困や偏見に苦しみながらも力強く生きていく物語だ。中沢さん自身の体験を基に描いている。現在25カ国で翻訳され、米国では権威のある「アイズナー賞」で殿堂入りを果たした。
 かつては多くの学校に所蔵され、子どもたちに戦争のむごさを伝えてきた。近年、国内で評価に逆風が吹いている。「表現が過激」「歴史解釈に問題がある」として、学校図書館での閲覧制限を求める声が上がった。地元広島市では、食料を盗むシーンなどが教育上良くないなどの理由で平和教材から姿を消した。
 映画は被爆者に対する差別を恐れていた中沢さんが、筆を執るまでの経緯を紹介。作画を手伝っていた妻の言葉から、執筆時の苦悩が明らかになってくる。
 被爆者が当時の様子を語るだけではなく、作品を批判する人の意見を盛り込んでいる。「物語のテーマは間違いなのか。教育の現場から排除される必要があるのか」という点を確認しているようで、興味深い。
 もうすぐ太平洋戦争が開戦した12月8日を迎える。戦争体験者が高齢化し、語り継がれる機会が失われようとしている今だからこそ、語り部たる「ゲン」の意義を考える機会にしたい。

 シネマ5で12月6日(土)~12日(金)の午前10時半。

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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