大分市佐賀関で発生した大規模火災で、大分県は19日、焼損した建物が170棟を超えると発表した。市街地で発生した国内の火災としては平成以降で最悪の可能性がある。出火から30時間以上たっても鎮火に至らず、消火活動が続いている。民家の焼け跡からは性別不明の遺体が見つかった。住人の男性(76)と連絡が取れておらず、県警は身元の確認を急いでいる。
県災害対策本部や県警などによると、出火当時、南東に吹いていた強風の影響で火の粉が舞い上がり、住宅密集地に燃え広がった。無人島で約1・5キロ沖合の蔦(つた)島にも飛び火したとみられる。
焼失面積は民家や空き家、山林など約4万8900平方メートル。遺体が見つかった民家は出火初期に激しく燃えていたという。このほか、50代女性が煙を吸い込んで、喉に軽いけがを負った。
19日朝までに消火活動に当たった部隊は、市消防局と市消防団で計58台・275人に上る。応援要請を受けた別府や臼杵など6市消防本部の計7台・31人も駆けつけた。
炎は山林にも広がり、10カ所以上から火や煙が上った。県は19日午前9時、陸上自衛隊に災害派遣を要請した。ヘリが出動し、大分県や熊本県の防災ヘリとともに空中から大量の水をまいた。住宅地では、消防隊員らが地上から放水を続けた。
大分市によると、最大で125世帯・188人が佐賀関市民センター内の佐賀関公民館に身を寄せた。避難生活が長期化する可能性があり、大分県は市に災害救助法を適用し、被災者支援の強化を図る。地元のJX金属製錬佐賀関製錬所は独身寮の31室を被災者の宿泊施設として提供する意向。
総務省消防庁によると、今回の建物被害数(速報値)は、2016年12月に新潟県糸魚川市で起きた大規模火災の147棟を上回る。林野火災や地震に伴う火災を除くと、およそ半世紀前の1976年10月に1774棟を焼損した山形県酒田市の「酒田大火」以降で最大の被害となる。
消防庁は19日、被災状況を把握するため、職員2人を大分市に派遣した。
火災は18日午後5時45分ごろに発生した。大分県と市は同11時、それぞれの連絡室を災害対策本部に格上げした。
政府も首相官邸危機管理センターに情報連絡室を設置。高市早苗首相は自身のX(旧ツイッター)で「避難されている住民の皆さんにお見舞いを申し上げる。地元自治体と連携して最大限の支援を行う」と投稿した。