「火の華」心に傷を負った元自衛官の再生

「火の華」の一場面(ⓒanimoproduce Inc. All Rights Reserved.)

 海外派遣中に心に大きな傷を負った元自衛官が、再生していく様子を描いたドラマ。
 2016年、南スーダンの「非戦闘地域」で国連平和維持活動(PKO)に従事していた島田(山本一賢)の部隊は、現地兵と衝突する。仲間の1人が射殺され、隊長が置き去りになってしまう。
 それから2年。退官していた島田は戦闘による心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しめられる日々を送っていた。花火師藤井(伊武雅刀)の工場で働き始め、優しい同僚たちに囲まれて少しずつ癒やされていくが…。
 同国への自衛隊派遣部隊を巡る「日報問題」に着想を得たフィクション。日報のデータが残っているにも関わらず、防衛省が「破棄した」として不開示を決定した問題だ。
 作中では、戦闘の事実が政治的な都合で隠蔽(いんぺい)されている。口外することができず、過去から逃れることのできない元自衛官たちの、憤りや苦しみが描かれていく。
 「火薬」の使われ方が象徴的。戦うための弾丸として使われる一方で、心に響く輝きを放つ花火の原材料でもある。技術的には両者に差がないことを自覚させられながら、「平和とは何か」ということを考えさせられる物語だ。

 シネマ5bisで11月8日(土)~14日(金)の午後2時45分。13日は同7時10分も上映する。

 ◇ ◇ ◇

 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

最新記事
出版社「点滅社」屋良代表が大分市でトークショー 鬱の本「あるだけで安心なものに」
大分県内の芸術文化関係者ら150人が交流 「文化を語る夕べ」活動や抱負語り合う
【追跡2025大分】節目のアルゲリッチ音楽祭 「精神」どう引き継ぐか
米軍基地テーマ、杵築市の船尾修さんが写真集出版 戦後の日米関係「議論のきっかけに」
子どもがプロと作品制作、大分県立美術館で体験授業 専科教員の不在受け学校と連携