法務省が検討している危険運転致死傷罪への数値基準の導入に絡み、法相の諮問機関である法制審議会の刑事法部会は24日、基準を下回る高速度事故での適用について議論した。法務省の示した素案では、基準との差が10キロ未満であれば悪質性に応じて適用できるようにしている。法務省は「通学路で多数の児童をはねるなど、高度の危険性が認められる事故を想定している」と説明した。
東京・霞が関で第6回会合があり、刑法学者や被害者遺族ら委員が出席した。法務省は前回会合で危険運転罪を一律に適用する速度超過の数値基準案を提示。一般道(最高速度20~60キロ)では「40キロ以上」と「50キロ以上」の2案を示している。
線引きが明確になる一方で、基準を1キロでも下回ると処罰できないのは社会の理解を得にくいとして、10キロ未満であれば「道路や交通の状況」に応じて適用の可否を判断する要件も盛り込んだ。
法務省によると、想定しているのは▽路面が凍結し、ブレーキやハンドル操作ができない道路▽子どもたちが行き交う通学路―などで起こした死傷事故。「基準を満たしたケースと同じような高度の危険性や悪質性が認められる」と捉える。
他方で、ほとんど車が通らない夜間帯に出会い頭で偶発的にぶつかったような事故は、基準に近くても「適用できない」との見解を示した。
この日は、新たに危険運転罪の対象に加えることを検討している「ドリフト走行」についても議論した。処罰範囲が広がりすぎないように、意図的にタイヤを滑らせた運転に限定するように求める意見があった。
危険運転罪の見直しは、大分市の時速194キロ死亡事故(2021年2月)などで適用要件の不明確さが浮き彫りになったのがきっかけ。次回会合で、とりまとめに向けた試案を出す。
<メモ>
大分市の時速194キロ死亡事故は2021年2月9日午後11時ごろ、大分市大在の一般道(法定速度60キロ)で発生した。当時19歳だった男(24)が乗用車を時速194キロで走らせ、交差点を右折中の乗用車に激突。運転していた同市坂ノ市南、会社員小柳憲さん=当時(50)=を死亡させた。大分地裁は昨年11月、危険運転致死罪で男に懲役8年の判決を言い渡した。控訴審の福岡高裁は来年1月22日に判決を言い渡す予定。