【竹田】竹田市内唯一の小児科専門医療機関で2年間近く休診した市立こども診療所(玉来)が7月に診療を再開し、3カ月が過ぎた。市は課題だったスタッフの負担軽減などを図り、利用数は以前の水準を取り戻しつつある。市は「安定した運営になっている」と話した。
「いいですね。問題なし」。10月上旬、診療所長の男性医師(57)は平田彩峰(あやね)ちゃん(1)に聴診器を当て、予防接種を手際よく済ませた。所内では他に数組が順番を待っていた。
彩峰ちゃんの父・浩太さん(41)=久住町栢木=は「以前は市外まで片道1時間かけて通っていた。診療時間に間に合わないこともあった」。ただ一人の医師が2023年7月に入院したことで陥った休診期間を振り返った。
所内では他にも体調を崩す職員がいた。市は課題を洗い出そうと、外部有識者による検討委員会を設置。今年1月に受けた答申に沿って体制を改善した。
スタッフの負担を軽くするため1人だった看護師を3人に増員。計7人体制で運営している。他にも土曜を休みにし、診療終了を1時間早くした。以前は深夜まで働く職員もいたが、再開後は点滴といった処置で残業する程度で長時間労働はない。
市と診療所のコミュニケーション不足も課題だった。19年に一時休診に陥った騒動の原因でもあった。
再開後は市保険健康課の担当職員が毎日、医師らと話し合い、市幹部と情報を共有。市執行部と医師らでつくる運営委員会も発足し、8月には2回目の会合を開いた。医師は「人員が充実し、働き方が改善された。風通しも良くなったと感じる」と語った。
再開後の診療、予防接種などの合計利用件数は1日平均▽7月 18件(19年比13件減)▽8月 19件(同13件減)▽9月 25件(同7件減)。以前の状況に戻りつつある。
一方、市内の出生数は昨年度、46人まで減少した。厳しい経営が想定されるが、市保険健康課は「安心して子育てするためにも小児医療は必要なインフラだ」と力を込めた。