【問う 時速194km交通死亡事故】危険運転罪の行方② 弁護士の趙誠峰氏「速度の数値基準は混乱招く」

「高速度について数値基準を導入すると、混乱を招く」との見方を示す趙誠峰弁護士=3日、東京都内

 ―高速度と飲酒運転を対象にした危険運転致死傷罪の数値基準をどう受け止めているか。
 「高速度と飲酒運転は分けて考えるべきだ。飲酒は厳しく対処することについて社会の合意があり、数値での線引きもあり得るだろう。しかし、高速度は導入すると大きな混乱を招く」
 「最高速度60キロといっても、歩行者や信号の有無など道路の状況はさまざまだ。首都高速道や地方都市のバイパス道路では道幅が広く、中央分離帯もある中、時速100キロほどで走行する車が多い現状もある。こうした道路で、例えば隣の車線を走る車に接触し、死傷事故を起こしたら全て危険運転罪になる」
 ―超過した速度だけでは危険性を測れないのか。
 「そもそも最高速度は、道交法違反の速度超過を摘発するための数値。危険運転罪の基準にすると、意味合いが大きく変わる。どういった事故だったのかという具体的な危険性を見ずに、速度という形式で処罰するのは違和感を拭えない」
 「危険運転罪は、傷害致死に匹敵する故意の悪質運転を対象にしている。数値基準が導入されれば、罪質は大きく変容する」
 ―法改正されたら、適用件数はどうなると思うか。
 「数値基準が導入されれば、高速度の件数はかなり増えるだろう。法定刑は最長で拘禁刑20年と厳しい。現行法でも致死の場合の量刑傾向は5年以上が多く、10年を超える事例もある。交通犯罪ほど、市民と隣り合わせのものはない。自分自身のあの運転が危険運転と言えるのか、という視点で法改正の議論を見てほしい」
 ―一方で被害者遺族をはじめ、多くの人が現行法に不条理を感じている。
 「交通事故を対象にした過失運転致死傷罪は最長で拘禁刑7年。執行猶予が付くケースも多く、危険運転罪との刑罰の差は確かに大きい。だからといって危険運転罪の処罰範囲を広げるのではなく、ギャップを埋める中間の処罰類型を設けることの議論を進めてもいいのではないか」

 ちょう・せいほう 福井県出身。刑事弁護に精通し、2022年、東京都内に弁護士事務所を設立した。第二東京弁護士会の所属。多くの刑事裁判で弁護人を務め、多数の無罪判決を獲得している。

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