【豊後高田】現代日本文学を代表する小説家安部公房(1924~93年)の妻で、豊後高田市玉津出身の画家安部真知(1926~93年)が手がけた装丁本の展覧会「豊後高田は晴れ。わたし、いま、帰ってきました」が、同市御玉の市立図書館で開かれている。30日まで。入場無料。
真知は6人きょうだいの次女として生まれた。本名は安部真知子(旧姓山田)。桂陽小、高田中、高田高を卒業後に女子美術大(東京)に進み、日本画を学んだ。47年に公房と出会い結婚した。
画家や舞台美術家として活躍し、公房や花田清輝などの小説の装画を手がけた。装丁本の収集家で今回の展覧会を企画した装画研究家のかわじもとたかさん(76)=東京都=によると、装丁本は作家14人の計68冊が確認されている。昨年、神奈川近代文学館であった公房生誕100年記念展で真知を紹介するコーナーが設置されるなど、再び注目を集めているという。
展覧会は、来年の生誕100年を前に真知の業績を地元に知ってもらおうと開催。装丁本のほか、真知が16歳のころ描いた日本画など計約60点を展示している。
開会に合わせて真知の孫真能(まのう)里沙さん(41)=ドイツ在住、おいの山田一太さん(75)=東京都、岡部心介さん(70)=豊後高田市大平=も来場。真能さんは「一緒に工作をしたり絵を描くなどしたとても優しいおばあちゃんだった。装丁本はそれぞれ画風が違い、独特の世界観を表現していて見応えがある」。
かわじさんは会期終了後、真知の装丁本を同図書館に寄贈する予定。「20年間続けてきた真知の調査に一区切りが付き、地元の人に任せるのがふさわしいと考えた。展覧会をきっかけに、公房と真知の素晴らしさに触れてほしい」と話した。