福岡高裁で29日にあった時速194キロ死亡事故の控訴審初公判。危険運転致死罪に問われた被告の男(24)は出廷せず、公判は7分ほどで結審した。事故で亡くなった小柳憲さん=当時(50)=の姉、長(おさ)文恵さん(59)=大分市=は閉廷後、「今後の事故抑止につながるような判決を望みたい」と話した。
初公判は同高裁で最も大きな101号法廷(96席)で開かれ、傍聴席の半分ほどが埋まった。
平塚浩司裁判長は淡々とした口調で開廷を告げ、審理を進めた。弁護人と担当検事もそれぞれ冷静に意見を述べた。
長さんは被害者参加制度を使って出廷。検察官の隣に座り、絶えずペンを走らせた。退廷する際は、傍聴席に頭を下げた。
公判終了後、長さんは近くの福岡県弁護士会館で、全国の交通事故遺族らでつくる「高速暴走・危険運転被害者の会」のメンバーと共に会見に臨んだ。
懲役12年の求刑に対して懲役8年を言い渡した一審判決に納得していないとして「常軌を逸した運転による事故だった。量刑が適切と言えるのか」と述べ、二審で見直すよう改めて求めた。
一審で退けられた「妨害目的」の立証のために検察側が新たに請求した証拠の取り調べを、平塚裁判長が全て認めなかったことについては「厚い壁を感じた」と声を落とし、「どんな判決が下されるのか、見守るしかない」と語った。
法廷に姿を見せなかった被告に対しては「真摯(しんし)に向き合っている様子を見ることができず、残念。被告側も控訴したのだから、判決は見てほしい」と憤りをにじませた。