「海辺へ行く道」子どもと大人…異なる芸術の捉え方

三好銀の漫画を映像化した「海辺へ行く道」(ⓒ2025映画「海辺へ行く道」製作委員会)

 芸術家の移住を推進する海辺の町を舞台に、3章仕立てで繰り広げられるコメディー。今年2月の第75回ベルリン国際映画祭では、子どもを題材にした作品を対象としたジェネレーションKplus部門で特別表彰を受けた。
 奏介(原田琥之佑)は美術部に所属する中学2年生。夏休みに入っても、新聞部や演劇部の手伝いをするなど、忙しい毎日を送っている。ある日、奏介は美術商のA(諏訪敦彦)から作品を褒められ、模型の制作を依頼される。
 一方、先輩のテルオ(蒼井旬)は仲の良い老婦人が「亡くなったおじいさんが夢に出てきた」とつぶやいたのを聞く。特殊メークを作り上げて、亡き夫に変身しようとするのだが…。
 三好銀の漫画シリーズを「いとみち」の横浜聡子監督がユーモラスでさわやかな作品に仕立てた。原田や蒼井、新津ちせなどのフレッシュな面々を、麻生久美子、高良健吾、宮藤官九郎など実力派俳優が独特の雰囲気で支えている。
 特筆すべきは「芸術」の捉え方の違い。奏介をはじめとする子どもたちは、表現したいことを形にしようと汗を流す。対して大人たちは他人に認められたい、もうけたいといった目的を達成するための手段になっている。
 作風自体は穏やかだが、「芸術は何のためにあるのか」というシニカルな視線が隠されているようで面白い。

 シネマ5で10月4日(土)~10日(金)の午前10時、午後5時45分。4日は午後の上映を休止する。(この日程以外も上映あり)

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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