城下町にたたずむ工房。和紙の香りが漂う空間で、一本一本の竹骨が職人の手によって伝統の形へ組み立てられる。
中津和傘は江戸時代に製造が始まった伝統工芸品。竹製の骨格作りから和紙張り、乾燥、装飾に至るまでの全工程が手作業で行われる。完成には約2カ月。職人の丁寧な手作業が、丈夫で美しい和傘を生み出している。最盛期の昭和初期には市内に70軒以上の店があったが、洋傘の普及で需要が減少。2003年ごろには最後の店が廃業した。
今吉次郎さん(72)は「中津で生まれた伝統文化を守ろう」と、05年に有志と「朱夏(しゅか)の会」を立ち上げた。「作り方を教えてくれる人がおらず、現物を解体するなど手探りで製法を学んだ」と苦労を話す。試行錯誤の末に復活させ、現在も和傘工房「朱夏」(中津市鷹匠町)で職人として活動を続けている。
和傘は地域の伝統行事や歌舞伎の舞台などにも活用される。工房は今や全国で10軒ほどしか残っておらず、その存在は希少だ。「子どもたちにも日本の文化を知って育ってほしい。和傘という地域の文化を残すための体制を整えていきたい」と展望を語った。