「Dear Stranger / ディア・ストレンジャー」誘拐をきっかけに揺らぐ夫婦

「ディア・ストレンジャー」の一場面(ⒸRoji Films, TOEI COMPANY, LTD.)

 誘拐事件をきっかけに、夫婦の思いが噴出し、パートナーシップが揺らぐ姿を描いたドラマ。
 米ニューヨークに住む日本人の賢治(西島秀俊)は建築を研究する大学助教授。妻の台湾系米国人ジェーン(グイ・ルンメイ)は、実父の介護や育児をしながら人形劇団のアートディレクターをしている。夫婦仲が悪いわけではないが、どこか隙間風が吹く。
 ある日、ジェーンと4歳の息子カイが実家の雑貨屋で店番をしていると、強盗グループに襲われる。その後、ジェーンが買い物中、車にスプレーで落書きされる。立て続けにトラブルに見舞われる中、賢治の仕事に同行していたカイが行方不明になってしまう。2人はパニックに陥るのだが…。
 なぜ、一家の周りでこのようなことが起こるのか。全ての出来事には1人の人物が関わっていた。それは、関係を悪化させたくない夫婦が記憶の中に封じ込めていた存在。事件の真相が明らかになるとともに、夫婦間に大きな影を落とし、2人の溝を大きく広げる。彼らがたどり着く先は希望なのか、絶望なのか。
 「言語」の使い方に注目。アジア人俳優の西島とグイが、外国の地で、全編ほぼ英語で会話をする。それだけで観客はストレンジャー(よそ者)になったような不安感や、緊張感を感じる。一方、口論になるとそれぞれの母国語が飛び出してしまう。違う言語をぶつけ合い、意思疎通ができていない様子を効果的に表現している。

 シネマ5で27日(土)~10月3日(金)の午後2時40分、同7時40分。(この日程以外も上映あり)

 ◇ ◇ ◇

 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

最新記事
出版社「点滅社」屋良代表が大分市でトークショー 鬱の本「あるだけで安心なものに」
大分県内の芸術文化関係者ら150人が交流 「文化を語る夕べ」活動や抱負語り合う
【追跡2025大分】節目のアルゲリッチ音楽祭 「精神」どう引き継ぐか
米軍基地テーマ、杵築市の船尾修さんが写真集出版 戦後の日米関係「議論のきっかけに」
子どもがプロと作品制作、大分県立美術館で体験授業 専科教員の不在受け学校と連携