「六つの顔」野村万作の足跡、自らの言葉で

芸歴90年を超える狂言師、野村万作の芸の源泉に迫るドキュメンタリー「六つの顔」(ⓒ2025万作の会)

 芸歴90年を超える和泉流狂言師、野村万作の芸の源泉に迫る犬童一心監督のドキュメンタリー。
 万作は1931年生まれの94歳。3歳で初舞台を踏み、軽妙な中に深い情感を感じさせる演技で、2007年に重要無形文化財各個指定保持者(人間国宝)として認定された。
 作品は24年に東京都で開催された文化勲章受章記念狂言会の様子を中心に名優の姿を映し出す。
 金沢市から上京し、鉄道会社などに勤めながら狂言に取り組んだ祖父の初世萬斎や、子どもに教えることが上手だった父万蔵―。次々と脳裏に浮かぶ「顔」とともに、今までの足跡を自らの言葉で振り返る。
 型を大切にする稽古に疑問を抱き、他のジャンルの演劇に対して憧れを持っていたことや、古典である狂言を演じる上での心持ちを述懐する。息子の萬斎や孫の裕基らも登場し、師である万作の魅力を語る。
 特筆されるのは万作が25歳からライフワークとして取り組んでいる「川上」が全編約40分収録されているということ。4月に大分市で開催された「第13回狂言やっとな会」でも上演された珠玉の名作だ。現代語訳されたせりふが字幕で表示され、練られたカメラワークで堪能することができる。演じ手の思いを知ることで、新たな味わいがある。
 13日には、同市の平和市民公園能楽堂で開催される「第28回夏季狂言の会」に出演する万作。舞台と映画の両面から名優の魅力に浸ってみてはいかが?

 シネマ5bisで20日(土)~26日(金)の午前10時、午後2時15分。(この日程以外も上映あり)

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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