「入国審査」移民の国の時代性を色濃く

「入国審査」の一場面(ⓒ2022 ZABRISKIE FILMS SL BASQUE FILM SERVICES SL SYGNATIA SL UPON ENTRY AIE)

 新生活を夢見て米国にやって来たカップルが、空港で過酷な入国審査を受ける様子を描いたサスペンス。
 スペイン・バルセロナで暮らす女性エレナとベネズエラ出身のディエゴは事実婚のカップル。2人は移住するため、米ニューヨークへとやって来る。入国審査官にパスポートを提示するが、別室へと連れて行かれる。
 乗り継ぎ便の時間が近づいても解放されず、職員から体を乱暴に調べられる。エレナの糖尿病薬まで取り上げられる。審査官のバスケスは「あなたたちは正式に入国したわけではない。面接で全てが決まる。私の裁量次第だ」と高圧的。2人の出会いなどプライベートを聞いていくのだが…。
 BGMもなく、実際に尋問されているような緊張感が背中に走る77分。人権無視といえるほど行き過ぎた取り調べをする審査官と、その横暴さに怒り涙するエレナ、そしてどこかうろたえて見えるディエゴ。交錯する3者の立ち位置がドラマに厚みをもたらしている。
 米国は移住者が建国した「移民の国」。現在のトランプ政権は、特定国の出身者に対する在留資格の取り消しを実施するなど、極端な政策を取っている。作品は、そんな時代性を色濃く映した「現実的なストーリー」だ。
 皮肉の効いたラストシーンは秀逸。見ている人も登場人物と同じ表情になってしまうのでは?

 シネマ5で13日(土)~19日(金)の正午と午後6時20分。13、15、19日は同8時5分も上映(この日程以外も上映あり)。

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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