【九重】2020年7月の豪雨で遊歩道が被災し、閉鎖されていた九重町湯坪の景勝地「小松地獄」が5年ぶりに再開した。豪雨で、最寄りの公共駐車場と地獄をつなぐ木道が崩壊。調査で地割れなども見つかり、23年度から復旧工事を続けていた。地元関係者は「待ちわびていた。大切な地域資源を守っていきたい」と意気込んでいる。
小松地獄は、筋湯温泉や九州電力八丁原地熱発電所近くにある町の観光名所の一つ。岩場のあちこちから高温の噴気ガスが出ており、熱水から上がる湯気や硫黄のにおい、「熱泥」がボコボコと音を立てる様子などがさながら地獄をイメージさせる。
復旧工事では崩壊場所を迂回(うかい)する木道(延長90メートル)を設けたほか、未舗装だった遊歩道(同123メートル)にタイルを敷き、新たな木道(同32・8メートル)もつくった。入り口階段の新調や排水施設整備なども含めた総事業費は約1億5400万円。うち約4300万円は環境省と県の補助金を充てた。
7月中旬の再開後、多くの観光客が訪れ、8月中旬に日帰りで来た熊本市の男性(51)は「自然のすごさを感じる雰囲気がいい」。備え付けられたさお付きの籠に持参した生卵を入れ、木道から熱水に漬けてゆで卵を作った。
九重悠々亭(同町湯坪)女将(おかみ)の古賀圭子さんは「チェックアウトの際、宿泊客に生卵をプレゼントして訪問を勧める取り組みを有志でしている。地域全体で盛り上げたい」、旅館ゆのもと荘(同)経営の軸丸幸義町観光協会長は「地獄蒸しによる調理など住民の生活にも根差した地域資源。5年の閉鎖を経て、改めてその価値に気付いた」と話した。
小松地獄は入場無料で、公共駐車場から徒歩約15分。係員などはいない。問い合わせは町観光・地域振興課(0973-76-3150)。