2024年に地震(1月)や豪雨(9月)で大きな被害を受けた石川県の能登半島で暮らす人々を題材にした短編2本だ。
「生きがい」は演出家の宮本亜門が監督、脚本を手がけたドラマ。元教師の信三(鹿賀丈史)は土砂災害に遭い、崩壊した家屋から救出される。厳しい顔を崩さず、周囲と話をしたがらない信三は「黒鬼」と呼ばれるように。だが、ボランティアの青年と知り合い、考え方に変化が訪れる。
もうひとつの「能登の声―」は実際の住民にフォーカスを当てた手塚旬子監督のドキュメンタリー。映画「生きがい」の撮影は半壊の建物などで実施された。協力した地元の人が作品に託した思いとは。また、カメラは震災ごみとして捨てられようとしている輪島塗を引き取って、再生させる人々を取り上げる。
フィクション、ノンフィクションの両面から、試練を乗り越えようとする人間の強さを描いている。一方、忘れてはいけないのは、能登半島地震が発生してから2年もたっていないことだ。被災者らの傷はまだ癒えていない。
「運のいいことに地震があった」と住民の神経を逆なでするような発言をした国会議員がいたが、世間の関心も低下傾向にあるように感じる。能登は今どうなっているのか知らない人には、ぜひ見てほしい2作品だ。
シネマ5で30日(土)~9月5日(金)の午後0時35分。
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