太平洋戦争敗戦直後の満州で、開拓団を守るために性接待を強いられた女性の証言を取り上げたドキュメンタリー。
1942年、岐阜県白川町黒川の住民たちは、政府が国策として策定した「二十カ年百万戸送出計画」に従って、満州の陶頼昭(現在の中国・吉林省)に開拓団として入植を始める。同戦争末期、ソ連軍侵攻をきっかけに現地中国人からも襲われ、満州内の開拓団はパニックに陥る。
集団自決を選択するコミュニティーも現れる中、人命を優先した黒川開拓団はソ連の将校を頼る。だが、「守ってやる代わりに、団内の女性に性接待をさせろ」と求められ、18歳以上の未婚女性15人を差し出す。
終戦から1年が過ぎ、帰国できた同開拓団の人々。身をていして人々を守った女性たちに向けられたのは、世間や同胞たちの「汚れた娘」という差別と偏見に満ちた視線だった。
2013年に被害女性が告発するまで、性接待の事実に触れることはタブーとされてきた。同町内には、1982年に被害者の慰霊碑が造られたものの、当初は碑文も説明文もなかったという。「臭い物にふたをする」という対応が、彼女たちの人生にどのように影響を及ぼしたのか、本人や関係者のインタビューでよみがえらせていく。
戦争の傷痕から「憎むべきものはなんなのか」を考えさせてくれる一本。
シネマ5で8月2日(土)~8日(金)の午後0時35分。
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