「木の上の軍隊」終戦を知らず、援軍待つ日本兵2人

「木の上の軍隊」の一場面(ⓒ2025「木の上の軍隊」製作委員会)

 終戦を知らず、木の上で2年間生き延びた日本兵の物語。
 太平洋戦争末期、沖縄本島から9キロ離れた伊江島は日本軍から「不沈空母」と呼ばれ、航空戦の要としての役割を求められる。沖縄県出身の新兵、セイジュン(山田裕貴)は友人の与那嶺(津波竜斗)と共に飛行場建設などに従事していた。1945年4月、米軍が侵攻し激しい攻防戦を展開。セイジュンは上官である山下(堤真一)と共に追い詰められていく。次々と殺される仲間や島民。2人はガジュマルの木の上で身を潜めながら、援軍が到着するのを待つことになる。
 原作は、実話を基に劇作家井上ひさしが原案を残した、劇団こまつ座の舞台作品。映画版は同県出身の平一紘が監督を務めた。
 「木の上生活」の序盤で見せる人懐こくおおらかなセイジュンと、厳格な山下の会話シーンはユーモラスで、悲惨な戦争を描いた本作の中でも特徴的だ。だからこそ、敵の姿におびえ、飢えに苦しみながら心に変調を来していく姿が際立つ。山田と堤の硬軟使い分けた演技は、胸を締め付けられる。
 作中、ふるさとが軍事によって壊されたセイジュンが、県外出身の山下に「なぜここで戦うのか」と思いをぶつけ、「俺の地元で戦えば満足なのか」と返されるシーンも。現在も米軍基地問題に対する沖縄の人と、本土の人の捉え方に差があることと重なる。
 終戦80年を迎え、戦争の本質について考えさせてくれる一本となっている。

 シネマ5bisで26日(土)~8月1日(金)の午前10時、午後0時半、同5時半。(この日程以外も上映あり)

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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