「それでも私は Though I’m His Daughter」加害者家族のあり方問う

「それでも私は Though I'm His Daughter」(ⓒYo―Pro)

 オウム真理教の代表だった松本智津夫元死刑囚(教祖名・麻原彰晃)の三女にフォーカスを当て、加害者家族のあり方を問うたドキュメンタリー。
 1995年3月、東京都内の地下鉄電車内で、新興宗教だったオウム真理教の幹部らが神経ガスのサリンを散布し、死傷者を出した。警視庁は同年、松本元死刑囚を逮捕した。
 教団内でアーチャリーと呼ばれていた三女の麗華さんは、当時12歳。後に教団を去った彼女は進学を志すが、大学から受け入れを拒否される。銀行口座を作ろうとしても、受け付けてもらえない。インターネットの交流サイト(SNS)には「あなたは幸せになってはいけない」「臓器を売って被害者に渡せ」「さっさとくたばれ」の書き込みが寄せられる。
 麗華さんの中の「松本智津夫」は優しく親しみのある人物。そんな父が凶行に走った理由を聞き出せず、事件について消化できていなかった。加えて連座制のように、権利を制限され誹謗(ひぼう)中傷を受ける中で、社会から拒絶されていると感じ、死にたいと考えるようになる。
 カメラは麗華さんが、犯罪被害者遺族と対談し、加害者家族としてどう振る舞えば良いのか悩む姿や、趣味の筋トレを通じて社会の中に居場所を見つけ出そうと奮闘する様子を映し出す。
 親の人生に左右され、自分の意思とは関係なくいばらの道を歩むことになった女性が、力強く生きていく姿には、共感する人も多いのではと思う。

 シネマ5で12日(土)~18日(金)の午前10時。

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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