「海がきこえる」青春の痛みや甘酸っぱさ、繊細に

「海がきこえる」の一場面(ⓒ 1993 Saeko Himuro/Keiko Niwa/Studio Ghibli, N)

 高校生の恋心や友情を描いたアニメーション。1993年にテレビ放映された作品のリバイバル上映。
 東京で大学生活を送っていた杜崎拓(飛田展男)は、駅のホームで地元の同級生武藤里伽子(坂本洋子)の姿を発見する。同窓会のために高知県に帰郷することになった拓は、高校時代のことを思い出す。
 高校2年の夏、親友の松野豊(関俊彦)に呼び出され、東京から里伽子という少女が転校してきたことを知らされる。拓は豊の態度から、彼女に心を奪われたことを察知する。
 年が明けた3月、ハワイに修学旅行に行った拓は、特に親しくなかった里伽子から、突然「お金を貸してくれない」と頼まれる。それは、彼女に振り回される日々の始まりだった…。
 原作は氷室冴子の小説。スタジオジブリの作品の中で、宮崎駿、高畑勲両監督が直接的な参加をしていない初めての作品となった。当時20、30代のスタッフの手によって生み出されたのは普遍的で等身大の若者像。飛田や関らが見せる繊細な演技と相まって、痛みや甘酸っぱさを感じさせる良作になっている。
 劇中伴奏音楽(劇伴)や、キャラクターのファッションなど放映当時の世相を色濃く映している。当時を知らない世代でも、キュンとすること請け合い。暑い夏をさわやかにしてくれる一本だ。

 シネマ5で7月5日(土)~11日(金)の午後2時20分、同6時5分。(この日程以外も上映あり)

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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