【中津】中津市の奥塚正典市長(71)が慶応大創設者の福沢諭吉について学ぶ授業のゲストとして同大から招かれ、30日、学生を前にスピーチする。奥塚市長は福沢に対する市民の思いを伝えるとともに、地方自治体が抱える課題解決へ「若い学生の知恵を貸してほしい」と訴えるつもりだ。
授業は、福沢や慶応義塾が日本の近代化に果たした役割について多面的に捉える「近代日本と福澤諭吉I」。日吉キャンパス(横浜市)で開かれ、人文系学部の1、2年生を中心に約370人が受講している。
担当するのは、慶応義塾福沢研究センターから推薦され、昨年度まで6年間にわたり中津市で学芸員を務めた同センター助教の松岡李奈さん(33)らで、学生の地方への関心を高めたいとの狙いもあり奥塚市長を招くことになったという。
スピーチは約1時間の予定。奥塚市長は福沢が1歳から19歳まで過ごした当時の中津の環境に注目し、「福沢は漢学から蘭学へと学びを広げた。それは蘭学を推奨した藩主の存在など学ぶ土壌があったから。福沢がもがきながら未来を切り開いたことを自分なりの解釈で伝えたい」と話す。
市は若年世代の人口流出といった課題を抱えており、「情報技術の発達でどこでも学び、働ける時代になった。学生が地方の課題に関心を持ち、『学びの里』中津を訪れてフィールドワークや研究を進めたくなるようアピールしたい」と意気込んでいる。