岡本太郎氏の1969年制作「緑の太陽」別府市に 大阪・関西万博受け認知度向上に期待

岡本太郎氏が手がけた「緑の太陽」=別府市田の湯町

 【別府】別府市のJR別府駅西口側にあるビル壁面には、太陽に向かって手を広げる人の様子が描かれている。作品名は「緑の太陽」。1970年の大阪万博でシンボル「太陽の塔」を制作した芸術家・岡本太郎氏による陶板レリーフだ。大阪・関西万博が開幕してから2カ月。市内の関係者は岡本氏が再び注目されたことに合わせ、「緑の太陽」の認知度が上がることに期待している。
 「緑の太陽」が完成したのは大阪万博前年の69年。駅西口正面にある旧サンドラッグビル(田の湯町)の建設に伴い、オーナーが制作を依頼した。岡本氏は万博準備中だったが、両親が何度も訪れていた別府に作品を残そうと承諾したという。
 高さ17メートル、横10メートルの壁に赤、緑、黄などの陶板を張り合わせた大作。岡本氏の作品を管理、展示する川崎市岡本太郎美術館によると、制作時のまま現存する壁画は少ないという。
 当時の本紙では、8月26日の除幕式に関係者や市民150人が参加したと報じている。
 除幕式にも訪れた元別府市職員の外山健一さん(88)=馬場=は「緑の太陽」を「別府の文化的な宝物」と捉え、制作に携わった職人から聞き取るなどして資料にまとめた。時間の経過もあり、市内であまり知られていない現状を残念に感じている。「作品を広く発信してもらいたい」と話す。
 市内の名所を巡るツアーを開く別府八湯ウオーク連絡協議会(平野芳弘共同代表)は、「緑の太陽」をルートに取り入れている。ツアー参加者から「おー」「なぜ別府にあるの」といった声が上がるようだ。
 平野さんは「ツアーなどを通して、もっと周知していきたい」と、後世に残ることを願っている。

■作品に合わせ上部の壁継ぎ足し
 作品に使われた陶板は、滋賀県の信楽焼を採用。色を入れるのが難しく、特に緑の色味を合わせるのに苦労したという。同じ作業場で「太陽の塔」の一部も同時期に作られた。
 作品は、赤い太陽から緑の光が差し込み、太陽に向け手を伸ばす人の姿が描かれている。
 別の見方もあり、女性(右)と男性(左)の口づけを表現しているという。赤い太陽は女性の左頬、その上の細い緑の部分は目に当たる。最上部の緑のラインが男性の鼻の輪郭になる。
 作品がビルよりも大きくなったため、上部の壁を継ぎ足したそうだ。人の手も隣の壁にはみ出している。「芸術は爆発だ」と語った岡本太郎氏らしいエピソード。

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