「ルノワール」人の痛みを知り成長する少女

「ルノワール」の一場面(ⓒ2025「RENOIR」製作委員会+International Partners)

 好奇心旺盛だった少女が、周囲の大人が抱える悲しみを知り、成長するひと夏の経験を描いたヒューマンドラマ。監督は「PLAN75」で第75回カンヌ国際映画祭で高い評価を受けた早川千絵が務めた。
 舞台は1980年代。11歳の少女、フキは「みなしごになってみたい」と題する作文を書いて教師をびっくりさせたり、友人と超能力者のまねをして遊んだりと、豊かな想像力を膨らませながらマイペースに過ごしている。
 母詩子は、がん闘病中の父圭司の看病と仕事のはざまでせわしない日々を送る。職場ではパワーハラスメントの疑いをかけられ、メンタルトレーニングを受けることに。そこで講師の透と親しくなるのだが…。
 人生経験の少ない幼少期は「人の痛み」を知識でしか理解できていないもの。フキも同様で、作品序盤で戦争の悲惨な記録映像を見ていても感情を動かされているように見えない。
 しかし、両親を含めた周囲の大人が後悔し、苦しむ姿を目の当たりにすることで成長を遂げていく。
 フキを演じる鈴木唯の演技が印象的だ。感情豊かな役ではないが、淡々とした言動の中に、子どもが持つ鋭い感受性や、無邪気ゆえの邪悪さをしっかりと感じさせてくれる。脇を固めるリリー・フランキーや河合優実、中島歩などといった実力派にも引けを取らない存在感を示している。

 シネマ5bisで21日(土)~27日(金)の午前10時20分。午後2時40分、同5時10分(この日程以外も上映あり)

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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