【大分】大分市明治地区の小池原神楽が結成80周年を迎えた。戦争で娯楽が失われた時期に地域を盛り上げようと若者が集まったのが始まり。激動の時代から平成、令和を経ても跡継ぎが途切れることはなく、楽員は「先人の思いを守り、伝統芸能で地域を盛り上げたい」と気持ちを新たにしている。
1945年、当時各地で盛んだった素人演芸で地域を元気にしようと当時の若者が考えたのが神楽だった。指導したのは福岡県北九州市から戦火を逃れ、当時地区に住んでいた戸次尾津留神楽の本家、戸次敦見さん(故人)。神楽面は住民が出し合った米120キロとわずかな現金で人形師に作ってもらい、衣装や小道具、草履は手作りした。
高度経済成長期には田畑が住宅地に変わり、楽員も増え、活気に満ちた。演目は20種類に倍増。練習の際は仲間同士の世間話に花が咲いた。大きく舞う八雲払いや神逐(かみやらい)、柴引きで人気を博し、地元の小池原八坂神社の大祭をはじめ、市内各地のイベントに出演。2004年には台湾公演も実現した。
現在の楽員は16人。毎週末の夜、小池原八坂神社に集まって練習する。後継者育成を目的に00年に発足した子ども神楽の16人も一緒だ。4月中旬には同社の春季大祭で、舞を披露し、小池原神楽発足80周年と子ども神楽25周年を祝った。
楽員歴48年の広戸一政会長(72)は「修理を重ねながら80年受け継いできた面もあり、戦後の若者の思いは今も神楽に宿っている」、児玉清二座長(67)は「大きな節目を迎えた。これからも楽員が技を磨き続け、どんな時代でも愛される神楽であり続けたい」と話している。