【別府】別府市緑丘町の県厚生連鶴見病院は東部医療圏(別府、杵築、国東3市と日出町、姫島村)で唯一の緩和ケア病棟を5年ぶりに再開した。新型コロナウイルス患者の受け入れのため利用できなかった。専門医の丸山寛医師(66)が着任し、がん患者の心と体の痛みを和らげる治療などに力を入れる。「緩和ケア病棟は地域に身近な存在であることが理想。社会に理解を広めたい」と思いを語る。
丸山医師は自らもがんを患った経験がある。熊本市出身。福岡県内の病院などに心臓血管外科医として長く勤めた。2011年に虫垂がんが見つかり、約2年にわたる闘病生活の中で人生の意味を深く考えるようになったという。
「人間は一定のことを成し遂げ、いい人生だったと思いながらゴールテープを切りたいのではないか」
患者の心に寄り添おうと新たな分野に進むことを決意。当時勤務していた福岡県八女市の公立病院の緩和ケアチームで主治医の後方支援をしながら学び、15年に関連病院のホスピスの緩和ケア医になった。在宅医療も知りたいと訪問診療の経験も積んだ。
鶴見病院が専門医を探していると知り、今年4月に赴任した。
病棟は全個室で8床。がんの治療はせず、苦痛を和らげる薬物治療やケアをする。丸山医師を中心に看護師や薬剤師、栄養士、公認心理師ら多職種チームで患者と家族を支える。
地域の医療機関などと連携しながら、在宅など患者や家族が望む場所での医療の提供を目指す。話し相手などボランティアの活用も検討している。
丸山医師は「患者と家族は体の痛みだけでなく、精神的、経済的な影響などさまざまな苦痛を抱える。丸ごとの人間として寄り添い、人生を振り返って納得できる時間を過ごせるような環境をつくりたい」と話した。
<メモ>
入院は悪性疾患と診断され治療しない選択をした人が対象。担当医の紹介状が必要。Aタイプ4室(1日2200円)とBタイプ室(無料)がある。Aは家族室や応接セットなどを完備し、家族との時間をゆっくり過ごすことができる。共有スペースにはキッチンやラウンジ、浴室などがある。