「来し方 行く末」弔辞を代筆する作家の日常描く

「来し方 行く末」の一場面(ⓒBeijing Benchmark Pictures Co.,Ltd)

 中国・北京を舞台に、弔辞を代筆する作家の日常を描いたヒューマンドラマ。
 主人公の聞善(胡歌)は脚本家としてプロデビューを果たしたが、作品を完成させることができずに挫折していた。気が付けば40歳目前。実家には稼業を続けているとうそをつきながら、葬儀場で弔辞を代筆するアルバイトで生活費を稼ぎ、同居人の小尹(呉磊)と生活を送っている。
 聞は脚本家として培った確かな取材力で、遺族や関係者から丁寧に聞き取りをして文章に盛り込んでおり、高い評価を得ている。会社の仲間に急逝され困惑している経営者や、父親と十分な交流ができないまま永遠の別れを迎えてしまった男性、余命を宣告された老婦人―あらゆる境遇の依頼者が心情を口にしていく。
 死を取り扱ったストーリーだが、悲愴(ひそう)感は少ない。聞の取材によって、見送る人や見送られる人の生き方や考え方、愛情や絆がよみがえってきて、人生賛歌といえる展開をみせる。主人公自身も依頼者と触れ合うことで、自分の人生を前向きに考え始める。穏やかな作風も相まって、温かな気持ちにさせてくれる心地よい119分が過ごせるに違いない。

 シネマ5で6月7日(土)~13日(金)の午前10時。

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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