【別府】別府市内の共同温泉で、清掃を担う人の確保が難しくなっている。市のアンケートでは、4割の施設が担い手不足に苦慮していると回答した。背景には運営に当たる組合員の減少や高齢化があるとみられる。管理ができず閉鎖する施設も出ており、関係者は「別府を象徴する文化が10年、20年先に失われてしまうかもしれない」と危機感を募らせている。
共同温泉は地元住民らの組合などが運営しており「ジモ泉」とも呼ばれる。市によると、2024年4月時点で市内に100カ所ある。
アンケートは昨年5~6月、持続可能な施設運営を検討する目的で実施。70施設から回答を得た。
調査では「困り事」として76%が「管理者の高齢化」を挙げ、40%が「清掃する人の確保」と答えた。
「最も大きな支出」は清掃費が49%で最多。高齢化や組合員数の減少により43%は掃除を業者に委託しており、高額な清掃コストが運営の負担となっている実態が浮かんだ。
若草温泉(若草町)で役員を務める男性(65)は「多くの施設で運営が崩壊しつつあるのでは」と案じる。同温泉では昨年7月末、これまで委託していた清掃業者から「廃業した」と連絡があった。新たな引受先はなかなか見つからず、委託料を2倍に引き上げ契約してくれる業者を確保したという。
行政による支援は限定的だ。市は施設の補修に充てられる補助金は設けているものの、清掃費などソフト面に関しては「あくまでも組合が主体となって対応するのが原則」との立場を取る。
問題解決の糸口として、市温泉課は「横のつながり」の構築を呼びかける。近隣の複数の施設が同じ業者に清掃を一括委託すれば、費用を安く抑えられる可能性もあり、施設間の交流を促進する意見交換会を開いている。
市内では京町温泉(京町)など複数の施設が運営に行き詰まり、近年、閉鎖や休業に追い込まれた。
NPO法人「別府八湯温泉道名人会」の花田潤也理事長(45)は「若者に共同温泉を身近に感じてもらい、引き継いでいく取り組みが必要だろう。ネーミングライツ(命名権)の付与といった企業との連携による運営の可能性も探るべきだ」と提言した。