【別府】別府市の鉄輪温泉で、東京の不動産開発業者2社による富裕層向けホテルの建設計画が浮上している。既存ホテルの建物などを買収して取り壊し、鉄筋5階(高さ約20メートル)を建てるという。一帯は景観条例に基づき市が建造物の新築を高さ15メートル以下に制限している地域。開業に至るには計画変更または高さ制限を緩和する市の特例措置などが求められ、曲折もありそうだ。
2社は「伊藤忠都市開発」と「サンケイビル」。計画を仲介する建設コンサルティング「テイサ開発」(大阪市)によると、鉄輪温泉の「もと湯の宿 黒田や」(同市御幸)の不動産を買い取り、約115室を備えたホテルを新設する。高価格帯で、ブランド名は未定。2028年の開業を目指す。
「黒田や」は食肉卸・小売りの「まるひで」(大分市)のグループ会社「秀エンタープライズ」(別府市)が所有、運営している。現在も営業を続けており、契約がまとまり次第、閉館する。
隣接する「源泉の湯宿 ホテル鉄輪」の土地と建物も、2社が秀エンタープライズから取得し、解体後に宿泊者用の平面駐車場にする構想。
市によると、付近の高さ制限は「鉄輪温泉地区温泉湯けむり重点景観計画」の施行に連動し、2009年から設けた。
今年2月に開かれたホテル建設計画の地元説明会では参加者から建物の高さに対する不安の意見が上がり、50代女性は「特例を認めると制限を超える建物が乱立し、湯けむりが見えなくなるのではないか」と述べた。一方で「新たな客の流れができ、地元に良い影響をもたらすかもしれない」(50代男性)と期待する声も聞かれた。
取材に対し、伊藤忠都市開発の担当者は「検討段階のため、現時点での回答は差し控える」と話した。
市都市計画課は「事業者には地元に丁寧に説明するよう求めている。制度の運用については適切に対応したい」と語った。
<メモ>
別府市によると、高さ制限を緩和する特例措置を受けるには、住民説明会を2回以上開いた上で有識者で構成する建築審査会(7人)の意見を聞く必要がある。市長が「地域の住環境の維持に支障がない」と判断すれば、緑地率を一定以上確保することなどを条件に認められる。市内で特例措置が適用された前例はない。