中津市野依新池で「ベッコウトンボ」が例年の倍以上発生 冬場の水位維持で寒さ防げたことが原因か

羽化したベッコウトンボ。今年は例年の倍以上発生している=中津市野依の野依新池
羽化したベッコウトンボ。今年は例年の倍以上発生している=中津市野依の野依新池

 【中津】環境省レッドリストで絶滅危惧種ⅠA類に指定される「ベッコウトンボ」が今年、国内有数の生息地、中津市の野依新池やその周辺で例年の倍以上発生している。環境保全に取り組むNPO法人水辺に遊ぶ会(同市)によると、近年は200匹前後だったが450匹以上を確認。冬場に池の水位が維持されて生息スペースが確保でき、水中で寒さを防げたことなどが原因と推測している。
 十数年前から市委託事業などで羽化シーズンの発生数を調べている同法人によると、野依新池(ため池)周辺では2000年ごろまで2千匹以上が見られた。
 その後は減少傾向で、この6年間はほとんどの年が200匹以下。68匹の年もあった。理由はため池の改修や草地伐採による乾燥、農薬散布といった環境変化が考えられるという。
 今年は今月9日から、野依新池や植野池(宇佐市)などを調査。2回目(11日)に498匹、3回目(17日)には459匹を確認し、成熟した個体が縄張り行動をしたり交尾、産卵する姿も見られた。多い要因を「例年、水位が低下する冬に一定の水深が維持され、寒い時季を持ちこたえることができたためでは」と考えている。
 昨秋はベッコウトンボの成虫を含む希少なトンボ類の生息地として、野依新池近くの「尾無(おなし)の湿地」が環境省の自然共生サイトに認定された。
 羽化は5月上旬まで続く。同法人の山守巧さん(55)は「農業と環境保全のどちらも大事。減少傾向を増加に転じていくためにも、多くの人にベッコウトンボや生息地に関心を寄せてもらえたら」と話している。

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 29日午前9時から恒例のベッコウトンボ観察会が開かれ、野依新池や尾無の湿地などを巡る。自然共生サイト認定の式典も。参加費200円。問い合わせは水辺に遊ぶ会(0979-77-4396)。

<メモ>
 ベッコウトンボは未成熟期の体色が黄褐色のべっ甲色であることが名前の由来。昨年、市の天然記念物に指定された。野依新池は生物多様性の観点から選定された農林水産省の「ため池100選」に選ばれている。

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