県内の竹工芸の魅力を海外に発信しようと、大分市美術館(宇都宮寿館長)は若手作家と学芸員の育成事業に乗り出した。著名なデザイナーや専門家を招き、作家の創作活動を支援。学芸員は海外への売り込みや人脈づくり、企画力の向上を図る。事業を通して、国際的に存在感のある美術館を目指す。
国内の人口減少により、文化芸術の関連市場は縮小傾向が続く。独立行政法人日本芸術文化振興会は海外展開を視野に、人材育成や基盤を強化する文化施設を複数年度にわたって支援する制度を設けている。
同館提案の「大分発アートプラクティス発信事業―竹/キュレーション・プロデュース」は昨年9月、博物館・美術館区分で国立科学博物館、東京国立博物館、森美術館(いずれも東京都)とともに採択を受けた。
事業は日本一のマダケ産地である県内で発展した竹工芸の価値や魅力を掘り起こし、作家が海外に進出する足がかりとする。準備期間を経て、今年度から本格的に動き出している。助成金は2026年度までの3年間で計5700万円。
作家の指導に当たるのはファッションデザイナーのコシノジュンコさん、アートコンサルタントの米山佳子さん(以上東京都)、竹芸家の中臣一さん(竹田市)、宇都宮館長の4人。
今年度、作家は秋までに市美術館の所蔵品からイメージを膨らませて作品を制作し、同館で開く展覧会に出展する。学芸員は専門家から海外美術館に作品を推薦する方法を学んでいるという。
15日、大分市で会見した宇都宮館長は「県内広域で連携して、ワンチーム大分でよりグローバルなアート拠点を目指す。竹工芸と美術館にどんな可能性があるのか、面白いことをやっていきたい」と話した。
育成対象の作家と学芸員は次の通り。
▽作家 長谷川絢、谷口倫都、池将也(以上竹田市)近藤雅代(別府市)、木崎和寿(豊後大野市)、青柳慶子(由布市)▽学芸員 曽我俊裕、後小路萌子