大分市―大分空港のホーバー就航、当初予定から1年以上の遅れ トイレ設置も課題に

定期航路の就航が当初の計画から1年以上ずれ込んでいるホーバークラフト

 大分市と大分空港(国東市)を結ぶホーバークラフトの就航が、当初の予定から1年以上ずれ込んでいる。空港へのアクセス改善や大分県観光の起爆剤として期待されているが、相次ぐ訓練中の事故で安全対策や操縦士の育成が課題となり実現に至っていない。船内にトイレを設置するべきかどうかも検討事項として浮上しており、先行きは見通せない。
 ホーバーは当初、2024年3月末までの定期就航を目指していた。運航会社の「大分第一ホーバードライブ」(大分市)は23年11月から実地訓練を重ねてきたが、事故や天候不良に伴う訓練の中断が重なり「安全性を高めるために時間が必要」と判断。英国企業から船体の納入が遅れたこともあって、スケジュールを大幅に見直した。
 これまでに訓練中の事故は少なくとも7件確認されている。このうち昨年6月に船体から噴出する風にあおられて社員が転倒し重傷を負った事故と、同7月に大分市の発着場で船体がコンクリート壁にぶつかった2件の事故は、書類送検された当時の操縦士に対する刑事処分が出ていない。
 導入した3隻のホーバー全てにトイレがないことも運航に向けた課題となっている。船舶安全法の規定に基づく九州運輸局の内規では「沿海をおおむね30分で航行する船にトイレは不要」と定めている。
 計画上、片道約30分で航行するホーバーに設置義務はないものの、強風時などゆっくり走る場合は30分を超える可能性がある。同社は「利用客からトイレがあった方が良いという声もある」として、必要性を検討している。
 就航には九州運輸局の安全確認検査を通過しなければならない。同社は現在、検査に向けた準備を進めている。トイレを設置するとなれば、改修の規模によっては設置後に検査を受ける必要があり、さらなる遅れを招くことも考えられる。
 計画通りに進んでいない現状について、佐藤樹一郎知事は1日の定例会見で「3隻合わせて42億円で購入した県の財産が、初期の目的のように活用されていない状況は大変問題があると思っている。課題を解決して安全に就航してもらいたい」と述べた。

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