大地震の発生したミャンマーで医療支援に携わる国際医療NGO「ジャパンハート」創設者の吉岡秀人医師(59)=大分医科大(現大分大医学部)卒、小児外科医=が3月31日夜、大分合同新聞のオンライン取材に応じた。震源に近い病院で被災し、患者らと難を逃れた体験を証言。内戦に続く国難で苦しむ市民を思いやり「日本から支援を届けてほしい」と訴えた。
吉岡医師は地震が起きた28日昼過ぎ、第2の都市マンダレーに近いザガイン管区の「ワッチェ慈善病院」で仕事中だった。ジャパンハートによると、スタッフや患者、家族ら約100人が施設内にいた。
現地はめったに地震がなく、被災は「全くの想定外」。国内で戦闘が続いているため、最初の揺れは「衝突の巻き添えか」と思ったという。
手術室の壁の一部が崩落するなどし、間もなくして2度目の揺れ。少したった後の3度目で、施設のうち1棟の1階部分が崩れてつぶれた。
いずれも患者らは逃げ出して無事だったが、全身麻酔をかけて手術中の人もいた。ストレッチャーに乗せて慌てて運び出したという。
ミャンマーは2021年2月に国軍がクーデターを起こし内戦に突入。吉岡医師によると、医療従事者が不足し、被災者を受け入れられる病院はかなり限られている。「地震で道路も寸断された。これから点滴や痛み止めといった医療物資が足りなくなってくるだろう」と予想する。
吉岡医師は「震災で傷ついているのは、私にとっていとおしい人たちだ。大分からも思いをはせ、何らかの支援をしてもらいたい」と呼びかけた。
よしおか・ひでと 1965年生まれ、大阪府出身。95年にミャンマーでの医療支援を始め、2004年にジャパンハートを設立。月に1度、同国に1週間ほど滞在し、ワッチェ慈善病院で働く。
<メモ>
大分県内では多くのミャンマー人が暮らす。県の統計によると、クーデター前の2020年末は219人だったが、政変後に急増し、昨年末時点は10倍超の2330人となった。内訳は▽中津市 855人▽別府市 560人▽大分市 188人▽宇佐市 186人▽豊後高田市 119人▽国東市 107人―など。