子どもに無料や低額で食事を提供する「子ども食堂」が県内で増えている。「おおいたこども食堂ネットワーク」(事務局・県社会福祉協議会)の把握する開設数は右肩上がりで、10日時点で155カ所になった。集まるのは子どもたちに限らず、地域の多様な人たちが交流する場として広がりを見せている。
県社協によると、県内は2016年に初めて子ども食堂ができた。運営の多くを地域のボランティアが担っている。場所は公民館が多い。障害者や1人暮らしの高齢者も積極的に受け入れている。
増加の背景には、子ども食堂の認知度が上がり「困っている子どもたちのために」と始める人が増えたことや、スタッフにとっても「大勢で集まってご飯を作り、みんなで話しながら食べるのが楽しみ」と生きがいづくりになっている点があるという。
県社協は開設費用の助成や運営の後押しをしている。県社協地域福祉部は「当初は限られた子どもの支援をしていたが、現在は立ち位置が変わり、家や学校以外の安心できる場になっている。人と触れ合える、地域の温かい場所として続いてほしい」と話した。
■食材の調達、スタッフ自腹購入も
子ども食堂の数が増える一方、物価高騰などで資金難に苦しむ所も多い。食材の調達は、余った食品を募るフードバンクからの提供や地域住民の寄付に頼ることが多く、不足する場合はスタッフが自腹で購入することもあるという。
豊後大野市大野町田中の子ども食堂「ひろば」では毎月2回、ボランティアスタッフが手料理を振る舞う。午後3時から7時ごろまで開き、学校や塾、野球チームの練習を終えた小学生、これからバレーボールの練習に向かう子どもたちが集まる。
献立はその日にある食材を見てスタッフが決める。代表の後藤めぐみさんは「忙しい保護者に代わり、できるだけ手の込んだものを作りたい」と野菜たっぷりの健康的な食事を出している。
バレーボールの練習前に訪れた小学3年生の吉岡美心菜さん(9)と5年生の後藤芽生さん(11)は「ご飯がおいしくて、友だちに会えるから来るのが楽しみ。おなかいっぱいでバレーも頑張れる」と笑顔を見せた。
一方で困っているのは食材費。「お米や野菜は手に入りやすいけど、肉や魚も必要」と物価高の中でスタッフが代金を支払うこともある。
運営側の負担を少しでも減らそうと、公的な支援も広がっている。
県社会福祉協議会は、個人や企業がフードバンクに寄せた食料を各市社協などを通して提供。県は毎年クラウドファンディングで寄付を募り、昨年9~11月には約572万円が集まった。遊具や教材の購入費用も補助している。
県こども・家庭支援課は「困り事を解消できるよう多様な形で後押しをしたい」と述べた。