杵築市立山香病院が4月から訪問診療車を県内初導入 医師はオンラインで無医地区対応

杵築市立山香病院が導入した訪問診療車。車体には市のマスコットキャラクター「きつみん」がラッピングされている=杵築市山香町

 【杵築】杵築市立山香病院(小野隆司院長、138床)は4月から、オンラインで遠隔診療できる訪問診療車(医療MaaS=マース)を本格運用する。県内の医療機関では初めて。地域医療を支える中核病院として、交通手段のない高齢者の通院負担などの課題解決を図る。
 同病院は11診療科を設け、1日平均で約200人が通院している。救急患者を受け入れるとともに在宅医療を充実させるなど、地域を包括的に支えている。
 医療マースの総事業費は約3900万円。国の補助金(負担率2分の1)を活用した。大型ワゴン車内に病院と衛星回線で結ばれたカメラ、超音波診断装置などの医療機器を搭載。医師の指示で医療行為の一部を担える訪問看護師が同乗し、患者はモニターで病院にいる医師の顔を見ながら診察を受けることができる。
 4月から周辺に医療機関のない「無医地区」(梶ケ浜、山香町上、同山浦)でオンライン診療を開始する。各地区のコミュニティセンターなどでの出張健診にも当たる。将来的には災害発生場所への医療提供や高齢者施設での診療などにも活用する。
 3月上旬、杵築市熊野の梶ケ浜コミュニティセンターで実証実験があった。市南東部の海岸部で、市立山香病院から14キロほど離れている。高齢の地域住民ら約30人が参加した。
 検査技師が車に乗り込み、専用の機器で各種の検査を実施。小型モニターを通して小野院長が患者の病状を診断した。
 川口洋子さん(72)は頸(けい)動脈のエコー検査を受けた。「先生の顔が見えて、話しながらの診察なので安心感があった」と話した。
 杵築市内には同病院を含む19医療機関があるものの、15医療機関が人口の多い杵築地域に集中。過疎化の進む周辺部は高齢化率が50%を超えており、公共交通機関がなく、運転免許証返納などで通院が困難な人が増えている。国による地方のデジタル化推進を受け、同様の課題を抱える全国各地で医療マースの導入が始まり、2024年度末までに22自治体で導入される見込み。
 同病院は「通院が難しい人に対して初期で病気を発見し、適切な治療につなげることができる。公立病院として市民の健康寿命を延ばしていきたい」と話した。

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