【大分】大分市府内町のトキハ本店の屋上に1954年から祭られている大友氏ゆかりの歴史遺産「府内六蛭子(えびす)」の一つの「えびす様」が4月中旬から一般公開される。府内六蛭子は鎌倉時代に起源があるといわれ、現在は府内町と大手町、若宮八幡社(上野町)に合わせて5体が残っている。同店は「歴史あるえびす様をぜひたくさんの人に参拝してもらいたい」と話している。
市文化財課によると、府内六蛭子は約800年前、大友氏初代当主の能直(よしなお)が町の繁栄を願い、東国第一の「市」としてにぎわっていた下総古河(茨城県)から1体を勧請(かんじょう)したのが始まりとされる。宗麟の時代には工座(たくみざ)町(現在の錦町)に祭られ、江戸時代には府内城下(現在の府内町周辺)に6体が確認されている。
同店は当時の城下町の檜物(ひもの)町に当たり、同町の社は45年の空襲で焼失したと考えられるが、54年に大分バスと同店の共同ビルができた際に「えびす様」が屋上に安置された。その後も増改築を重ねたが、ほこらは維持。扉付きで、ご神体は見ることができない。
75年から現在の建物になり、屋上は2008年まで遊園地としてにぎわった。10年から開催していたビアガーデンはコロナ禍で19年に閉鎖。屋上の利活用の方法を模索していたところ、市内の歴史遺産の情報発信をしている市地域おこし協力隊の島貫泰介さん(45)の助言もあり、整備を進め、6年ぶりに開放することにした。
まずは3月9日に市中心部で開かれるウオーキングイベントに合わせて先行公開する。同店の板井宏明常務取締役(59)は「屋上はお参りに来た人がゆっくり過ごせるような憩いの場にしていきたい」と話している。