「ヒプノシス レコードジャケットの美学」視覚的なアートへと昇華

「ヒプノシス レコードジャケットの美学」(ⓒCavalier-Films-Ltd)

 1970年代を中心に、有名ロックバンドやミュージシャンのレコードジャケットを数多く制作した、英国のデザインアート集団「ヒプノシス」。数々の証言からデザイン制作の裏側を描いたドキュメンタリー。
 68年、ストーム・トーガソンとオーブリー・パウエルが創設。親交のあったバンド、ピンク・フロイドのアルバム「神秘」を手始めに、ジャケット制作の世界に足を踏み入れる。芸術的なデザインは評価が高く、レッド・ツェッペリンや10ccなど人気アーティストからの依頼が相次いだ。日本でも松任谷由実の「昨晩お会いしましょう」に携わっている。
 本作では作品ごとにエピソードを紹介。ストームとオーブリーのインタビューをはじめ、ロジャー・ウォーターズやジミー・ペイジ、ポール・マッカートニーといった大物アーティストが出演。当時の思い出を語る。
 ピンク・フロイド「炎~あなたがここにいてほしい」では、実際に火を付けたスタントマンを登場させ、15回も撮影。ウイングス「グレイテスト・ヒッツ」では、エベレストに30キロの銅像を設置する。良い作品を生み出すために、手間暇を惜しまず、何でも実践した情熱が映し出されている。
 現在全盛の音楽配信では、ジャケットは曲を視認させるサムネイル(縮小された画像)のような扱いだ。そんな今だからこそ、視覚的なアートへと昇華させたヒプノシスの姿は新鮮。レコードを知らない世代にも見てほしい一作だ。

 シネマ5で3月1日(土)~7日(金)の午後0時15分、同6時20分。

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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