「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」新しい人生へ、中年女性の葛藤

「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」の一場面(ⓒ - 2023 - ALVA FILM PRODUCTION SARL - TAKES FILM LLC)

 長く1人暮らしをしていた中年女性が、恋愛をきっかけに、人生が動き始める様子を描いたドラマ。
 主人公は東欧ジョージアの田舎で日用品店を営んでいる48歳のエテロ。家族もすでに亡くなっており、結婚をするつもりもない。近所の住人は「独り身なのがふびん」と同情を寄せるが、「1人だけど生きていける」と毅然(きぜん)とした態度を見せている。
 ある日、ブラックベリーを摘みにいったエテロは、枝に止まる黒いツグミに気を取られ、崖から滑落し軽傷を負う。危険な目に遭ったことで、その日、突発的に人生で初めて男性と体を重ねてしまう。相手は以前からエテロに気があった初老の配達員ムルマン。この日を境に、彼はメールなどで愛をささやいてくるように。彼女も恋心を抱くようになるのだが…。
 村の人々に未婚であることや、豊満な体形をからかわれながらも、クールな表情で受け流し、日々の生活を丁寧に送っている主人公。ムルマンと会えない時間や、年齢からくるだろう体調の変化など、彼女の心をざわつかせるものは多いけれど、その人生は、ツグミが大空に羽ばたくように、自由なものになるのか。エテロが見せる、細かな言動の中に、喜怒哀楽のドラマを楽しめるはずだ。
 エンドロール後、主人公がどうなったのか、鑑賞者で話し合ってみるのも面白いのではないだろうか。

 シネマ5で15日(土)~21日(金)の午前11時55分。

 ◇ ◇ ◇

 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

最新記事
出版社「点滅社」屋良代表が大分市でトークショー 鬱の本「あるだけで安心なものに」
大分県内の芸術文化関係者ら150人が交流 「文化を語る夕べ」活動や抱負語り合う
【追跡2025大分】節目のアルゲリッチ音楽祭 「精神」どう引き継ぐか
米軍基地テーマ、杵築市の船尾修さんが写真集出版 戦後の日米関係「議論のきっかけに」
子どもがプロと作品制作、大分県立美術館で体験授業 専科教員の不在受け学校と連携