【中津】慶応義塾の創設者で中津ゆかりの福沢諭吉が発した言葉にちなんだ特別展「学問に凝る勿(なか)れ」が、中津市三ノ丁の市歴史博物館で開かれている。社会に役立つ学識を持った塾生の輩出を目指した慶応義塾の学風に流れる諭吉の思想や、諭吉を育んだ中津藩の学問の系譜を紹介している。9日まで。
「学問に凝る勿れ」は、慶応義塾大学部開設時の始業式(1890年1月27日)の演説で諭吉が語った言葉。72~76年に諭吉が著した「学問のすゝめ」とは一見、矛盾するように感じられる。
慶応義塾発行の福沢諭吉辞典によると、その真意は学問を「人生の一芸」にとどめることを戒め、卒業後、習得した学問を実地に活用するよう求めたということだった。
展示は▽奥平家の入府と学問の萌芽(ほうが)▽藩校の成立と学問の隆盛▽文人交流と学問の発展▽維新の足音~藩士の分断と国学の浸透▽西洋文明の受容~福沢諭吉と近代社会―の5章構成。
奥平家が中津藩主となって入府(領地に入ること)後に設立された藩校「進脩館」での漢学教育から、国学、蘭学(らんがく)、諭吉が開いた洋学へと学問が発展した過程や育った人物を紹介。諭吉が学問を深めていった背景を知ることができる。
展示解説文には、同館学芸員の松岡李奈さんによる軟らかい文章の解説が添えられ、親しみやすくしている。諭吉の父親百助が買い求め、諭吉の名前の由来となった中国の書物「上諭条例」も展示している。
9日午前11時から同館でギャラリートークがある。観覧料は一般300円、中学生以下無料。問い合わせは同館(0979-23-8615)。