県産乾シイタケの価格が高騰している。1月16日の県椎茸(しいたけ)農協の入札会では、1キロ当たり平均8320円と過去最高値を付け、前年同期に比べ3084円高かった。高齢化による担い手の減少に加え、気候変動で生育が進まなかったことが重なったため。近年は生産量の落ち込みが続く。需要が大きく伸びたわけではないものの、高値を成長のチャンスと捉える若手生産者も出ている。
「年々取れる量は少なくなっている」。県椎茸農協の阿南輝芳事業部長(51)は危機感を隠さない。
2024事業年度(24年2月~25年1月末)に同農協が集荷できる量は約300トンを下回り、過去最少だった23年度から70トンの減少になる見込み。14年度の3割強にとどまる。
年間取引で約9割を占める2~4月の「春子(はるこ)」は昨春、気温が一気に高くなり収穫できる期間が短くなった。秋も11月まで暖かい日が続いたことが響いた。
生産者も減少の一途をたどる。組合員数は約3650人と、ピークだった1986年から約4割減った。平均年齢も70歳を越える。
全国的に品薄が見られ、取引価格は高まっている。同農協の入札会で2021~22年度は1キロ当たり平均4千円台で推移していたが、23年夏ごろから上昇傾向が続いている。
食材で扱う飲食店は困惑している。大分市府内町にある和食料理店は「法事で出す煮物などに欠かせない。物価高でやむを得ないが、前より使う量は減った」と言う。卸売業者からは「あまり高いと消費者も離れるのでは」との懸念も聞かれる。
一方で、竹田市直入町長湯の生産者工藤仁史さん(40)は今の市場環境を好機と捉え、生産に励んでいる。乾燥機の燃料費など負担は増えたものの、年々駒打ちの量を増やしており、今年は15%増の約20万個を計画している。
大分市内で飲食店を営んでいたがコロナ禍もあり、20年に古里に戻った。父明秀さん(69)に学びながら栽培している。
仁史さんは「参入時はここまで価格が上がるとは思わなかった。いいものを作れば高く評価されるので、長く続けていく若手にとって収益を高めるチャンス」と話す。
乾シイタケの質・量ともに日本一を誇る「王国」の生産基盤を保てるか、踏ん張りどころといえる。就業を目指す人、間もない人を対象にした県の24年度研修には45人が集まり、過去3年より15人ほど多くなった。
県林産振興室は「関心が高い今、担い手確保につなげられるように、参入しやすい環境の整備や支援に力を入れていく」と話した。