【問う 時速194km交通死亡事故】遺族、控訴を強く要望 「妨害目的」他の裁判でも焦点

全国から集まった遺族らに大分地裁判決を報告する遺族の女性=1日、千葉市

 「危険運転」の成立を認めた大分地裁判決から3日後の今月1日。大分市の時速194キロ死亡事故で弟を亡くした遺族の女性(59)は千葉市内にいた。
 1999年11月28日に東京都内の東名高速道路で起きた飲酒事故で命を奪われた当時3歳と同1歳の女児2人の「しのぶ会」に参加するためだ。
 東京の事故が契機となり、2年後、悪質事故に厳罰を科す危険運転致死傷罪が創設された。会を主催する両親の井上保孝さん(74)、郁美さん(56)に促され、女性はマイクを握った。
 各地の遺族ら80人を前に、「大きな判決が出た。弟のために、やれることをやった」と声を詰まらせた。

 今後の焦点は検察側と弁護側の方針だ。地裁判決が確定するのか、福岡高裁に控訴するのか―。
 地裁は「現場の路面にわだち割れがあったと推認される。時速194キロで走行すれば、わずかな操作ミスで車線を逸脱する実質的危険性があった」と判断。危険運転致死罪の対象となる「進行を制御することが困難な高速度」に当たると結論付けた。
 一方で、同罪の処罰対象となるもう一つの「妨害目的の運転」は認定せず、量刑は求刑懲役12年に対し懲役8年となった。
 女性ら遺族は「量刑が軽い。非常に納得できない」として、地検に控訴するように強く要望している。

 「妨害目的」は、主にあおり運転や幅寄せを想定した規定。猛スピードで直進する車が右折中の車に激突した大分の事故に当てはまるかどうかは、他県の裁判を占う意味でも注目点だった。
 宇都宮市の国道で昨年2月、時速160キロ超の車がオートバイに追突し、男性会社員=当時(63)=が亡くなる事故が起きた。宇都宮地検は大分と同様に「制御困難」と「妨害目的」の2類型に当たるとして、加害ドライバーに危険運転致死罪を適用した。今後、裁判員裁判を控える。
 大分の事故より速度が30キロ以上低いことから、検察OBの一人は「妨害目的の成否が、危険運転を認定する上でより重要になるかもしれない」と語る。

 危険運転致死傷罪の適用基準を明確にするため、法務省は「法定速度の○キロ以上で走行」といった数値での線引きを検討している。
 ただ、法改正される前に起きた大分や宇都宮などの事故には、現行法が適用される。女性は闘い続ける必要があると考えている。
 「危険運転が認められて良かったが、一審判決で終わるわけにはいかないという思いがある。自分たちの裁判は、今後の他の遺族のためでもあるから」
 控訴期限は12日。検察側の判断を待っている。

<メモ>
 大分の事故は2021年2月9日午後11時過ぎ、大分市大在の県道(法定速度60キロ)で発生した。当時19歳だった被告の男(23)=同市=は、乗用車を時速194キロで走らせ、交差点を右折してきた乗用車に激突。運転していた同市の男性会社員=当時(50)=を出血性ショックで死亡させた。今年11月28日の大分地裁判決は、過失運転致死罪の適用を求めた被告側の主張を退け、危険運転致死罪の成立を認めた。

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