「ドリーム・シナリオ」スリラーか喜劇か、数奇な物語

「ドリーム・シナリオ」の一場面(ⓒ 2023 PAULTERGEIST PICTURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED)

 もし、あなたが身に覚えのないことで、突然人気者になってしまったら―。ある時、一斉に「何百万人の夢の中に登場」したことで、世間から騒がれるようになった男性の数奇な物語。
 大学教授のポール(ニコラス・ケイジ)は、ある朝、娘から「夢に出てきた」と告げられる。夢の中での彼は、家族が危険な目に遭っても動じることがなかったという。
 ポールの夢を見たのは娘だけではなかった。元彼女や大学の教え子、友人の家族、見知らぬ人まで、多くの人々の夢に登場していたのだ。彼の交流サイト(SNS)には「なぜ夢に出る。誰だ」などのメッセージが多く寄せられ、テレビ番組もこの現象を報じる。世間からは好意的に受け止められ、人気者になっていく。
 ところが、ある日を境に状況が一変。夢の中のポールが暴言を吐き、暴力を振るうようになったのだ。悪夢を見た人々の不安や憎悪は、現実のポールに向けられる。教え子は講義を欠席するようになり、娘も級友からいじめられる。彼は、この状況に困惑し、じわじわと追い詰められていくのだが…。
 自分の実像とは無関係に、称賛され、非難されるポール。現実のネット社会でしばしば起こる「バズる」「炎上する」を表しているようにも感じられる。不可解な出来事に翻弄(ほんろう)されるスリラーなのか、現実社会を鋭く捉えた喜劇なのか。見る人によって、鑑賞後の感想が大きく変わってくるだろう。

 シネマ5bisで30日(土)~12月6日(金)の午後0時40分、同2時45分、同7時20分。(この日程以外も上映あり)

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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