「カッティ 刃物と水道管」環境破壊や農村の貧困問題を鋭く

「カッティ 刃物と水道管」の一場面(ⓒLyca Productions)

 脱獄犯の男が、うり二つの社会活動家の男と入れ替わり、思いも寄らなかった行動を起こすドラマ。
 インド・コルカタの刑務所に収容されていた詐欺師、泥棒のカディルは、脱獄者の探索に協力する中で、自らも逃走を果たす。相棒のいる街、チェンナイにやって来るが、そこで銃撃事件に遭遇。撃たれたのは自分にそっくりな男、ジーバだった。カディルは病院に運び、助ける代わりに、入れ替わることを思いつく。
 やがて、ジーバとして、彼が責任者を務める老人ホームに赴く。当初はホームに渡るお金を盗んで逃げるつもりだったが、入所者の孫娘と恋に落ちてしまう。そんな中、ジーバの過去が明らかになる。彼の故郷の村は多国籍企業に卑劣な手段で収奪されており、行政長官に訴えたところ逆に逮捕されていた。村人たちは不正を伝えようと集団自殺。それを知ったカディルは涙を流し、村の先頭に立つことを決意する…。
 高品質なエンターテインメント作。歌やダンスといったインド映画定番の要素はもちろん、キレの良いアクションや意外性のある物語展開は心躍る。主演のビジャイは2役をしっかりと演じ分けていて見やすい。
 作品の根底に流れる強いメッセージにも注目。企業による環境破壊や農村が抱える貧困。そうした問題に興味を持たない都市部の人々やメディア―。楽しいストーリーの中にA・R・ムルガダース監督の鋭い社会批判が織り込まれている。

 シネマ5bisで16日(土)~22日(金)の午後0時40分と午後6時。

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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。

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