亡き父から学んだ思い出の焼き肉のたれ 別府市の森川さん、薬剤師から転身し3年がかりで商品化

管理薬剤師から転身し、焼き肉のたれの製造に励む森川由妃子さん=別府市堀田

 【別府】「おいしかったお父さん手作りの味を、多くの人と共有したい」―。別府市堀田の森川由妃子さん(52)は、製薬会社の管理薬剤師から個人事業主へと転身し、焼き肉のたれの製造に精を出している。レシピは5年前に亡くなった父正憲(まさのり)さん(享年75)から学んだ。家族の食卓を潤してくれた思い出の味だ。「楽しい食事を演出する一助になってほしい」と願いを込める。
 森川さんは大学卒業後、大手製薬会社の大分事業所に勤務。仕事に充実感はあったものの、20年以上働き「何か新しいことにチャレンジしたい」と漠然とした感情が生じた。2019年6月に早期退職。自給自足の生活に憧れ、無農薬の野菜作りを学んだ。
 次の道を探っていた際、病床に伏した父との会話を思い出した。「お父ちゃん、早く元気になって一緒に焼き肉のたれを売ろうよ」
 会社員だった正憲さんは料理が趣味で、週末になると家族に腕を振るってくれた。中でも焼き肉のたれは絶品で、冷蔵庫から欠くことがないよう作ってくれた。森川さんが職場のバーベキューや花見などで持参すると、同僚から「市販の物よりおいしい」「もらってもいい?」と好評だった。
 正憲さんは19年10月、肺がんで亡くなった。
 「失敗してもいい。とにかく始めよう」と思い立ち、調理場を22年5月に整備。同年10月までに必要な許可を取得し、3年がかりで商品化にこぎ着けた。
 たれは国産ピーナツをふんだんに使用しているのが特徴。香ばしさがコクとうまみを引き立てる。各原材料の多彩な味が調和するようバランスに細心の注意を払ったという。
 試作を繰り返す中で、正憲さんの作り方とは少し変わったが、「きっと父も、さらにいい味になったと言ってくれると思う」と森川さん。
 インスタグラムを開設して、焼き肉以外にもおでんやパスタなどさまざまな利用法を紹介している。「食卓で交わす何気ない会話は、とても貴重で幸せな時間だと思う。たれを食した人が一人でも多く笑顔になってくれればうれしい」と話した。

<メモ>
 商品名は「いつものあのタレ」。旨(うま)口と辛口の2種類あり、いずれも180グラム入りで650円(税別)。大分市神崎の道の駅「たのうらら」や別府市北浜のトキハ別府店で販売している。問い合わせは森川さん(0977-25-9876)。

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