2023年度の大分県と県内18市町村のふるさと納税による寄付総額は114億3346万円で、前年度から7億1152万円増えた。全国的な返礼品人気を背景に、5年連続で過去最高を更新した。ただ、寄付額は九州他県に水をあけられている。返礼品競争の側面はあるものの、自主財源確保や地元産品PRの手段となっており、県内自治体は一層の受け入れ拡大を目指している。
寄付額は県と14市町村で前年度を上回った。増加額が大きいのは由布市の2億9860万円、別府市の1億2834万円など。コロナ禍が明けて、いずれも宿泊費補助や体験型施設のチケットなど旅行関連が人気を集めた。
自治体別では、国東市が20億5889万円で9年連続トップ。前年度より減ったものの、おおいた和牛の生ハムや地ダコのボイルにリピーターが多い。2位の大分市は初めて10億円を超えた。市内で生産されたトイレットペーパーなど日用品が求められている。
県は昨春に就任した佐藤樹一郎知事が力を入れ始め、約3倍になった。「来県してもらい、新たな消費を生み出す」(おおいた創生推進課)と返礼品を増やし、県内のどこでも使える旅行クーポンが好評。アルゲリッチ音楽祭のチケットを希望した人も多かった。
寄付額から経費などを差し引いた収支は、17市町村が黒字を確保した。県と大分市は他の自治体に寄付した県民、市民が多く、マイナスとなった。
寄付は魅力的な返礼品がある自治体に集まり、地域を応援する制度本来の趣旨は薄れている。一方、厳しい財政状況の中、自治体にとっては貴重な収入源として重要度が増している。
全国で見ると、県全体の寄付額は30位で前年度の28位から下げた。九州・沖縄では最下位。県内の自治体間での差が大きい現状もある。
県は大分を代表する特産品を全市町村が扱える「共通返礼品」の拡充を検討するなど、各自治体の取り組みを後押しする。県市町村振興課は「先進事例の研修もして寄付額の底上げを支援したい」と話している。
<メモ>
全国の2023年度寄付総額は1兆1175億円で1521億円増えた。収支は寄付額の合計から、減収額(他の自治体への寄付額)と、返礼品調達費、広報、職員人件費などの経費を除いて算出する。減収額の75%ほどを国が交付税で補填(ほてん)するため、県、大分市とも実質的な収支は黒字となる見通し。