趣味を持たず、将来の夢も分からない―。今、この瞬間を刹那的に生きている女性が、自分の居場所を求めて苦闘するドラマ。今年のカンヌ国際映画祭では、国際映画批評家連盟賞に選ばれた。
脱毛サロンで働く21歳のカナ(河合優実)は、かいがいしく世話を焼いてくれる恋人ホンダ(寛一郎)と暮らしている。だが、優しいけれど刺激のない恋人に退屈。彼と別れ、浮気相手だったクリエーターのハヤシ(金子大地)と新しい生活を始める。
鼻にピアスを着け、心機一転。いざ新恋人との生活を楽しもうとするが、仕事に集中するハヤシはなかなか構ってくれない。次第に2人は衝突するようになるが…。
カナ役の河合は、テレビドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」や映画「あんのこと」「ルックバック」など話題作に主演。作品ごとに役柄をガラリと変えてくる実力派の俳優だが、本作では奔放な主人公を嫌みなくナチュラルに演じている。
仕事や友人関係にのめり込むこともなく、恋人は思い通りにならない存在。心身に不調を感じても、病名を与えられることもない。彼女にとって居場所と思える場所は、近づこうとしても逃げ水のように遠くに見えるばかり。無軌道にさまようカナの物語には、若者が抱える、言いようのないモヤモヤ感が詰まっているように思える。青春映画の傑作が誕生した。
シネマ5で9月7日(土)~13日(金)の午前10時、午後0時40分、同3時20分、同6時。(この日程以外も上映あり)
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「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。